Writer: がっきー
文学部生の風上にもおけない私ですが、何篇かお気に入りの詩があり、
春の気分に誘われて、それらのことを書いてしまおうという記事です。
今回は、短歌です。
穂村弘さんの「はんだごてまにあ」から始まる歌。
(適切に引用できる自信がなく、全部は載せられません)
最初どういう意味かまったくわからなかったのですが、
にしても、恋人のくちに春の野いちごをおしこむ、というイメージが強烈すぎて、
たまに思い出す作品になりました。
レトリックよりイメージを先行させて、読む人の記憶に気づけば定着させてしまう。
穂村さんの歌のおそろしいところ、おもしろいところです。
この歌の前半部は、「はんだごてまにあ」。
恋人が、はんだごての「まにあ」になったといいます。
はんだ付けという作業は、私も何度かしかやったことがありませんが、
熱で金属を溶かして、大事な部分をくっつけるという、集中力のいる作業。
私はどちらかといえば苦手の部類ですが、
機械オタク、電子工作オタクとなれば、
好きな子はたしかに好きかもなあ…。
「まにあの」ではなく、「まにあとなった」と描写されているので、
最初はそこまでではなかったけれど、次第にはんだごてばかりいじるようになった恋人。
そりゃ、野いちごをおしこみたくもなるかも。
はんだごてと野いちごが、あらゆるモノの中で両極端の組合せに思えてきます。
穂村弘『ドライドライアイス』(沖積社、1992)所収
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