革ジャンはこれ一択なのである。話は四半世紀も遡る。
愛車はカワサキ、空手部のユニフォームである黒いジャージの上に革ジャンといういで立ちの男がいた。簡素なデザインの、その値段を聞いて驚いた。服の値段ではありえない。そう思った。彼は言った。良い革ジャンは立つ。と。そこまで興奮するのかと揶揄すると彼は一笑に付し、革が厚いから床に立つ、とつけ加えた。当時、革のブルゾン(自分では革ジャンと思っていた)を着ていた私は別の友人に言われた。本当の革ジャンというものは冬でも下にシャツ一枚で過ごせるものなのだと。映画かなにかで見たのだろう、確かにそれが一番カッコイイ。
それから四半世紀、ふと思い立ち、ショット探しに夢中になった。ネットは使わない。一期一会の精神で出会いを夢みた。ショットに似たものはある。大きめのショットもときにある。ショットに似たものを買ってみたが所謂贋物だ。すぐいやになった。隣の県に足を延ばすと豊かな品揃えで、県民性の違いにまで考えが及んだ。そして、あった。そして、高い。清水寺の屋根から飛び降りた。レジの店員に代金を下ろして来ると告げ、念の為に金額を聞くと十分の一になっていた。嬉しいよりも不思議だった。値段の右端の0の左に極めて小さな点をうち、転売対策をしていたのだろうか。謎である。
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いっしー17(紹介)・・・西予市野村町出身、理系大学を卒業後、東証一部上場企業に入社、機械メンテナンス部門担当し、全国各地で活躍していたが、一身上の都合により退社。その後、地元に帰省し、17年間の自宅待機を経て、災害で自宅が浸水したことを契機に、社会復帰。現在、前職の機械メンテナンス業務を生かした仕事に就くかたわら、素朴な感性によるエッセイを執筆中。無類の釣り好きだが、おもしろいほどに釣れない。
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