後日、修理料金の見積もりが出た。もう一台買えそうな高額に驚いた。何日も考えたが気持ちは変わらなかった。とても払えない。
修理工場から伝言があった。エンジンを降ろすのにとても苦労したとの事。サービスの事を考えていない車なんて・・・。当時、機械の修理に携わっていた私は悲しかった。ファミリーカーの狭いエンジンルームに、速く走るためのいろいろなものをボンネットが膨らむまで詰め込んでいる。その行き場を失った熱でタイミングベルトが変質しやすいという噂だ。タイミングベルトのズレによりバルブタイミングが狂い、ピストンとバルブが接触するというわけだ。これではまるで、生まれながらにして心臓に持病をかかえたまま走るランナーでのようではないか。悲しいけど、ふんぎりがついた。
かくて赤い車との生活は四ヵ月という短い期間で幕切れとなった。赤い色はいい。気持ちを元気にしてくれる。カタチもいい。いつか電気自動車として再販されてほしいと願う。ドッカンターボもいらない。独特のエンジン音も、二本丸出しマフラーもいらない。始まりはルックスなのだ。
街で見かけると見えなくなるまで後ろ姿を目で追ってしまう。
さよなら僕の赤い星。
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いっし―17(紹介)・・・西予市野村町出身、理系大学を卒業後、東証一部上場企業に入社、機械メンテナンス部門担当し、全国各地で活躍していたが、一身上の都合により退社。その後、地元に帰省し、17年間の自宅待機を経て、災害で自宅が浸水したことを契機に、社会復帰。現在、前職の機械メンテナンス業務を生かした仕事に就くかたわら、素朴な感性によるエッセイを執筆中。無類の釣り好きだが、おもしろいほどに釣れない。
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